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タグ:史記



タイトルどおりに「歴史」がいつごろ発明され、そしてどんな記述をされたかという、歴史記述の変遷と種類を描いた本。

「歴史」という言葉に対して発明という言葉を使ったが、これはおそらく奇妙な言いまわしとして映るかもしれない、しかし、これには理由がある。
昔読んだこの本と似たようなテーマの本で岡田英弘の「歴史とは何か」という本があり、その中で歴史というものは紙や火薬と同じような発明品であり、「歴史」を発明しなかった民族がいてもおかしくない、みたいなことが書いてあって、深く印象に残った。
その本によると、歴史を「発明」したのは古代中国と古代ギリシャ、具体的に言えば司馬遷とヘロドトスの二人であり、それ以外は基本的に真似である、と。
例えば日本は中国に対抗するために歴史を必要としたし、イスラムはキリスト教圏に対抗するために必要とした。
だから、必要としない民族がいてもおかしくないし、歴史を持たない民族がいてもおかしくない、と。



「歴史意識」とは要するに何故歴史を必要とするのかという動機のことであり、「歴史記述」とは動機に応えてもたらされた記述のスタイルの事だ。
もちろん、「歴史意識」が違えば必然的に「歴史記述」も違ってくる。
この本では意識と記述、このふたつをセットで語ってくれるのでたいへんわかりやすい。
もちろんリブレットで薄い本なので、正直言ってもの足りないという感じはあるが、古代における歴史意識の多様さを、ある程度見渡す事ができる。

特に印象に残ったのは、②メソポタミアとエジプト、におけるもうほんとに萌芽って感じの歴史記述の紹介、これが面白かった。
例えば、出来事で名をつけるってのが、どうやら最も古い歴史記述の形らしい。戦争があった年、とか、疫病があった年、とか。
それが少し発展すると王名表って言って、王が即位してから一年ニ年と数えるようになったりする。
そして、この王名表も地域によって違いがありそれぞれ個性があるというのが面白い。


あんまり、こういったテーマを描いた一般向けの本って見かけないので非常に興味深く読み進めることができた。
分量が薄いのでややもの足りないという感じはあるが、こういったテーマに対する入門書としては充分合格だと思う。
地域ごと文明ごとに、このテーマで一冊ずつ本を出して欲しいと思う、できればリブレットで。



分かり易い紹介と要約
『歴史意識の芽生えと歴史記述の始まり』 たかぱんワイド



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まだまだ占いや観相が生きていた古代の時代の物語。一応ジャンル的には歴史小説に属するものの、その読後感はまるで、上質な昔話を読んだような感じがある。数奇なというしかない二人の姉弟の運命を扱った作品で、歴史小説につきものの政治や戦争の話は少なめだが、そのぶん独特の情感にあふれており、新鮮な読感がある。少し大袈裟な言い方をすれば、これは人間の運命を描いた物語だ。だから歴史物語であると同時に、神々は出てこないものの、神話物語のようでもある。塞翁が馬という言葉が好きな人は読むべきだろう、そして、分量的にはやや短めの長編なので、宮城谷入門としてもお勧めだ。

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