カラスっぽいブログ

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カテゴリ: その他の本

タイトルのおかげで損をしている本ではないだろうか。
やたらに刺激的で思わず眼を剥いてしまうタイトル、しかも著者はフランス人という事で、どうせドイツ嫌いのフランス人がやっかみ混じりにドイツをディスっているんだろうなどと、はじめて本屋で見かけたときは思ってしまったものだ。
そんなふうに思ってしまい、本を手に取ることなくスルーしてしまった人は多いと思う、そんな人はぜひともこの本を手にして欲しい、いや買えというわけではない、ただ、本を開いて最初のカラーページを見てほしい。
一目でわかることだが、ガスパイプラインの終着点のほとんどがドイツだったりする。(笑)
これほどまでわかりやすい、「ドイツ帝国」の地図というのもなかなかないかもしれない。
それだけでなく、本書を紐解けばわかるが、EUが実質ドイツ帝国とかしているという事が、著者の口を借りて繰り返し語られる。
そして、そのドイツ帝国の成立に一役買ってしまったのがフランスだというのだから、面白い。
著者によれば、フランスには独特の恐独病というモノがあるらしく、ドイツは怖いから刺激しちゃダメとばかりに気を使っていたら、いつのまにやらドイツがEUの王座についてしまったという事らしい、それもドイツ人が望んだわけではないのにも関わらず。
誰も掣肘する者がいない結果、えっいいんすか?とばかりにいつのまにやらドイツ帝国を築き上げてしまったドイツ人。
そんなドイツを著者は過激な言葉を弄してディスっている。


引用

P143
しかしドイツは、すでに二度にわたってヨーロッパ大陸を決定的な危機に晒した国であり、人間の非合理性の集積地の一つだ。ドイツの「例外的」に素晴らしい経済的パフォーマンスは、あの国がつねに「例外的」であることの証拠ではないか。
ドイツというのは、計り知れないほどに巨大な文化だが、人間存在の複雑さを視野から失いがちで、アンバランスであるがゆえに恐ろしい文化でもある。
ドイツが頑固に緊縮経済を押しつけ、その結果ヨーロッパが世界経済の中で見通しのつかぬ黒い穴のようになったのを見るにつけ、問わないわけにはいかない。
ヨーロッパは、二〇世紀の初め以来、ドイツのリーダーシップの下で定期的に自殺する大陸なのではないか、と。
そう、ドイツに対しては「予防原則」が適用されるべきだ!


いやちょっとさすがに言いすぎなんじゃないかな?(笑)
そもそも、二度の世界大戦の原因をドイツにだけおっかぶせるのはおかしくね?、と思ったり。
まあそんなふうな感じで、ちょっとドイツをディスりすぎかなと思う部分はあるけれど、今のEUはどんなもんなのかというのを知ることができ、面白かった。
一応EUには大統領がいるんだけど存在感空気な上に、なんとなくEUっていうとメルケルっていうイメージがあって、それが不思議だなって思ってる人は読んだほうがいいんじゃないかなって気がする。



わかりやすい要約 
書評・「ドイツ帝国」が世界を破滅させる エマニュエル・トッド 文春新書 

タイトルにわざわざルポと銘打たれていることからも分かるように、価値判断や、これからどうすべきかという未来への展望をいったん脇において、アメリカの現状はどうなっているかというただ一点に絞って書かれた本。
新書という事もありページ数はさして多くはない、したがって、一点にのみ絞った書き方は成功だったといえる。
何よりも好ましいのは先に書いたように、良いか悪いかこれからどうすべきかという切迫感が、よい意味でないところだ。
こういった電子書籍や、インターネットと本との関係をかたろうとなると、どうしても切羽詰って額に汗をかきながら力を込めて語るという語り方になりがちだ。
しかし、この本の著者は、ごく冷静にありのままに、額に汗をかくこともなくかといって冷静に突っ放すことなく、ごく淡々と事実を述べ伝える。
さながら、アメリカから届けられた手紙を読むような、不思議な読感がある。

出版は2010年ということで古い、従って今アメリカがどうなっているのかはわからないし、この本で書かれた情報は、もしかしたらもう役に立たないのかもしれない。
しかし、アメリカにおける出版事情や、独自のお国柄を知る上ではまだまだ役に立つのではないだろうか。
といっても、比較文化論を語ったり、日本とアメリカの文化の違いを考えたりということはなく、読者に対して、素の情報を提供するというスタンスが貫かれているため、そういった点に深みを感じず、不満に思う読者もいるかもしれない。
しかし自分としては、むしろそういった点が好ましく、押し付けがましくもなく過度に深刻でもないのがよかった。
額に汗して語るような「電子書籍論」に辟易している人は、この本をお勧めしたい。
いい意味で、そっけない本である。



引用

P43
 日本の出版社は、さしずめレンガでできた家。一つひとつの土台がしっかりしていて、不況という嵐にも強いけれど、変化できない。レンガががっちりお互いに食い込んでいるので、少し穴をあけて風通しをよくしようにもなかなかできない。かなりあちこち傷んでいるが、外からは中がどうなっているのかよくわからない。電子書籍という新しい部門が必要になっても、すぐに建て増しできない。
 一方、アメリカの出版社はというと、藁でも木でもなく、ゼリーやシリコンのような材質でできている家、という気がする。ぶよぶよと形を変えながら、必要になったらトカゲの尻尾切りみたいに、すぐにリストラして身軽になったり、新しい分野に進出したいとなれば、他の会社を買収したりして、器用に姿を変えながら成長していく。

P122-P123
しかし、彼は「本」というメディアに託されたドロドロの過去の歴史が、iPadというピカピカのガジェットで洗浄できると思い込んでいるようである。

教養という言葉を冠した本は数多く、教養を語った本もまた数多いだろう。
しかし、それらの本で語られているような「教養」は「教養」なんかじゃねぇと言う話。
これは別に著者が独特の俺定義を作り出しているとかそういう事ではなく、長い歴史の中で変質し捻じ曲がり、色々な夾雑物がつき、わかりにくくなった教養の姿を、もう一度洗いなおそうという試みだ。
「教養」の真の姿などというと大袈裟だが、「教養」の持つ真の意義はどこにあるかを著者は懸命に解き明かす。
著者に言わせれば「教養」とはとても小さなもので、それが大きく見えるのは、文学、人格、哲学などの、あかの他人が勝手に抱きついているからに過ぎないという。
そういったあかの他人たちを引き離し、あらわれた「教養」の真の姿はとても意外で虚をつかれるような姿だった。

その姿を一言でざっくり言ってしまうならば、それは自分らしさという事になる。
この説明は乱暴で著者は賛成しないかもしれないが、読者の一人としては、そういう感想を持った。
教養とは自分らしさである。
この自分らしさとは、個性という言葉とはちがう、少しだけズレがある
そのズレをうまく説明する事はできないが、個性というモノがなかなか直そうと思っても治す事のできないような、キャラにとっての属性のようなものとするなら、自分らしさとは、自分自身で探りながら、自分自身で少しずつ作り出してゆくものという感じだ。
この説明でわかってもらえただろうか。
個性的という言葉はあっても、自分らしさ的に当たる言葉はないという点が、この二つの概念の違いを説明していると思う。

自分らしさとは、一見すると簡単に得る事ができるようなものだが、意外にどうして難しいもので、そもそも自分にとって最もぴったりくる考え方・行動の型は何かという事を考えなければならず、しかも、その考え方・行動の型が自分自身に無理せずピッタリ合うものでなければならない。
これはまさに言うは易し行うは難しであり、おそらくは大部分の人間が、自分らしさを見つける旅の途上にあり、もしかすると、死ぬまで見つけることは出来ないかもしれない。
しかしそれでも、生きる上では、自分らしさを見つけることをやめることは出来ない、そんなものまどろっこしいから探さねぇよというのも、じつは一つの自分らしさだったりする。
自分らしさというのは、自分に身の丈の合った服のようなもので、だぶだふでもいけないし、ぴっちりしているのも息苦しい。
ぴっちりした服を着てこれが自分だ自分らしさだと思うときもあれば、だぶだぶの服を着て、これが自分だと思う時期もあるだろう。
要するに正解はなく、これで終わりというのもなく、採点してくれる人もいない。
何が正解かわからず、自分にとってもっともピッタリな服は何かというのも、一生探し続けなければならない。

だからといってこれは悲観的になる事もない、どうせ永遠に答は見つからないとなれば、逆に気は楽になるし無理をしようという気もなくなる。
自分らしさとは何かとは、色々な人やモノから教えられ、それは当然間違っていることもあれば正しい事もあり、そして正しいか間違っているかを判断するのも自分ともなれば、カオスの二乗という感じでどうにもこうにも仕様がないが、まあそういうもんかなとも思う。
生き続ける過程そのものが自分らしさを探る旅ならば、これは永遠に過程のままで完成を見ることはなく、自分らしさとは何かを分からずに、あるいは盛大に勘違いしたまま死んでゆく人もいるだろう、けれど、もともと正解はないとわかれば気も楽になるというもの。
ならば、慌てず騒がず、ほどほどに自分らしさを探しつつのんびり生きていけばよいのではないか?、まあそんなふうに思ったりするわけで、これが今の自分の結論だったりする。
そしてそれが、今の自分にとっての自分らしさであり、それなりに身の丈にあっているのではないかと思っている。



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適切な解説
分裂した世界を統合する能力 清水真木『これが「教養」だ』

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