戦時中に作られたプロパガンダ映画という事でやや構えて見始めたものの、なんだか普通に楽しめてしまった。
無論、時代が違うが故の違和感だとか引っかかりだとかはあるものの、基本的には普通に楽しめる青春スポ根映画だった。

スポ根と書いたが、バレーボールやサッカーを題材にしているわけではなく、あくまで、工場における女子たちの勤労の日々が描かれるわけだが、本質はスポ根であって、戦前だろうが戦後だろうが、日本人ってのは変わってないんだなあ~と思わせる映画だった。
この映画に対して、嫌悪感や違和感を持った人は頭の中で題材を変換してみると良い。
工場での勤労をバレーボールだとかに変えて見れは、不思議なくらいに違和感のない、青春感動スポ根映画だという事に気づいてしまうはず。
日本人って変わってないんだなあ~って思ったのはそういうところで、このみんなで一生懸命頑張ります主義みたいなものは、戦前であろうと戦後であろうとまったく揺らいでいない。
確か塩野七生のエッセイだったと思うけど、日本人のこういった一生懸命主義というのは、外国人の目から見るとやや奇異に映るらしく、ちょっと引かれてしまった、などと書いてあったのを記憶している。
日本人としてはあんまピンと来ないし、みんなで一丸となって一生懸命やることの一体どこがいけないのか?、と疑問に思ったりするものだ。

しかし、この作品を見ると、外国人の目から日本人を見るとどう見えるか、という事を疑似体験できる。
戦争中の日本などというのは、現代日本人にとってはなかば異国のようなものだから、そのまるで外国のような場所で、日本的な一生懸命主義というものを見せつけられると、ウーン…となってしまう。
塩野七生が書いてた、外国人が日本人の一生懸命さと団結力を見てちょっと引いてしまうという感覚は、こういう感じなのか、と。
そういう意味で非常に貴重な体験をすることができた、と思ったね。


まあ、そういっためんどくさい事を考えずとも、女子がたくさんでてきてわきゃわきゃしてくれる映画として、普通に楽しめばよいのだろう。
登場人物はやや多く、20人近くも女子がでてくるが、意外にもそんなに気にならないのは、「彼女たち」こそが主人公であって、「彼女たち」の青春を描いた映画だからだ。
もちろん「彼女たち」を代表するような登場人物はいるが、あくまで代表なのであって、「彼女たち」こそが真の主人公だろう。
プロパガンダ映画であるというのを頭から放り出して、あまり深く考えずに「彼女たち」を見守るつもりで鑑賞すれば、普通に楽しめると思う。
ただ、やたら善人ばっかり出てくるところがちょっとどうかって感じだが、この映画は今で言えば、文部省推薦の反戦映画みたいなノリなので、まあ、そこはしょうがないかな、と思う。



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