カラスっぽいブログ

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読後感の悪い傑作。読後感が悪いというと、なんだか作品を貶しているように聞こえてしまうがこの場合褒め言葉である。絶望的とも言える真実に対面した時の圧倒的ともいえるムナクソ感こそがこの作品の醍醐味であり、こういったタイプの独特な読後感も世の中にはあるのだなあ、と思った。後味が悪いというのとは違い、潔いといってもいいくらいに救いの存在しない、晴れやかなといっても過言ではない圧倒的な絶望感は、後味が悪いなどという中途半端なものではなくて、むしろ気持ちがいいくらいに吐き気がする。再読ではあるけれど、ほどほどに記憶が欠けていたおかげで素直に楽しむことができたし、前以上に楽しむことができた。間違いなく傑作。

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236ページと、新書としては普通よりちょっとだけ多いというページ数ながらも、キリスト教入門というタイトルに恥じず、何から何まで取り揃え、しかもわかりやすいという、贅沢な一冊。
ジュニア新書だからと高をくくって読み始めると、その内容と密度に驚かされる。
いわゆる、若者向けの入門書にありがちな、猫なで声のキモ文体は欠片もなく、ごくまっとうに真面目に書かれた文章で、奇を衒ったところはひとつもなく、ジュニア向けだからといって媚びない姿勢は読んでいて心地よい。
著者はキリスト教と宗教の学者であり、あくまで学問的な立場からこの本を書いており、信者が書くような護教的なタイプの本ではない、そこも安心して読むことのできるポイントだ。

 ⅳページより引用
 「本書は、キリスト教の布教伝道のためのものでも、キリスト教の信仰を深めるためのものでもなく、むしろノン・クリスチャン(非キリスト教徒)を読者に想定し、(中略)キリスト教という宗教について、正しく適切な知識と理解を養っていただくために書かれたものです。」

護教的な書物ではないが故に押し付けがましさがなく、冷静で中立的な記述には透明感がある。
歴史と教義だけではなく、三大派閥の違いもきっちり抑えてあるところもすばらしい。
それだけでなく、救世軍だのモルモン教だのといったどうでもいい有象無象まで解説しているあたり、読み物としてだけではなく、事典としても価値があるのではないか、と思わせる。 
事典代わりに一冊買っておいて、気が向いたときや知りたいことがあったときに、パラパラめくるという読み方もありだろう。

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茶人利休と秀吉との確執を描いた作品。
勅使河原宏監督作品は初めてなんだけど、予想していたよりもわかりやすく普通に鑑賞する事ができた。もう少しアートっぽい作風なのかなって思ってたんだけど、さいわいそんなことはなく、重厚な歴史映画、という感じ。
ただ、ある程度日本史の知識がないと辛いかなと、思う部分はある。
少なくとも、信長と秀吉に関する基礎知識くらいはないと、ちょっとついていけないかもしれない。従って万人向けとは言い難い内容だが、主人公が利休でテーマが茶道なので、この映画に興味持つ人って、ある程度歴史の知識がある人だと思うんだよね、だからこれくらい不親切でも、まあいいかなという気はする。

秀吉と利休、というテーマを扱った作品というと、真下が監督した『へうげもの』くらいしか知らないので、この作品が利休秀吉作品を扱った作品としてどんな立ち位置なのか、どれくらいの出来なのか、という事は判断できない。しかし、この作品で描かれる利休が、非常に一般的というか、おそらく正統的な利休像であろうことは、自分にもわかる。
基本敬語系で、物静かで、謙虚、という感じの茶人利休を描いており、いかにもという感じだ。
秀吉のほうも秀吉で、非常に秀吉っぽい感じ。
冒頭において二度、秀吉の足元がアップで映されるんだけど、金の足袋をはいているんだよね、いかにも秀吉っぽい。あと、飯の食い方が粗野なところとかも、印象深かった。
要するに、いかにもな成り上がりものとして、利休とは対照的に描かれているわけだが、これも非常に一般的というか、ごくまっとうな秀吉像であり、奇を衒った部分はない。

まあ、要するにおおざっぱにこの作品を説明すると、重厚で正統的な歴史映画っ感じだった。
意外性とかはあんまりないんだけど、画面の持つ美しさと俳優の演技に見ごたえがあり、なかなか面白かった。
特に、山崎努の演じた秀吉は怪演といってもいいくらいの迫力と存在感があり、この人の演ずる秀吉をもっと見たいと思わせる。
利休の弟子の態度に激怒して、処刑を申しつけるシーンなんかは、いかにも権力者って感じの狂気じみた迫力があって印象深い。演技っていうより、顔の迫力がすごいんだよね、顔の演技っていうべきかな。
このシーンだけでなく、全体的に、いかにも最高権力者って感じの、不遜さ我儘さ、そして人の話を聞かないところ(笑)、が良く描かれていて、これは映像作品独自の「感じ」だなあと思ったね。

あと最後にひとつ、すごく印象に残ったのは、松本幸四郎演じる信長がやたら印象に残った。
信長の持つ狂気じみた感じがよく出ており、あの独特の高笑いが耳をついて離れない。
出番はほんの十分かそこらなんだけど、この幸四郎信長はやたら存在感があり目だつ、そして印象に残る。もっと見たいなと思わせる怪演だった。

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いい意味で浅い作品だと思う。
一般的に言って、いい作品とは深い作品であり、浅い作品とは、あまりよくない作品である、とそういう事になっている。
深い/浅いとは、そもそも何を指していっているのか?、という疑問はあるが、それはこの際置いておいて、一般的には、良い作品とは深い作品であり、深い作品は良い作品である、という事になっている。

この作品は日仏の交流を描いたドキュメンタリー作品だが、東西の文化衝突だとか、考え方の違いだとか、そういったシリアステーマにはあまり触れずに、終始表面的な部分をのみ映している。
そういった意味では非常に浅い作品だと思う、が、しかし、だからといってダメな作品かと言うとそうは思わない。

描かれるのは日本人にしろフランス人にしろ、ごくごく一般的な人たちであり、普通でない所といったら、なんらかの形で日仏関係にかかわっているところくらい。
そういった普通の人たちの交流と、お互いの国に対する印象と感想だけで成り立っているといってもいいくらいで、考察無しの観察記のようなものだ。
しかし、表面的な部分しか映していないとはいえ、観察に徹しているぶん見やすくて面白い。下手な考察なんぞはない方がましだから。
こういった、良い意味でぬるいドキュメンタリーというのも、なかなかよいものだと思ったね。
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