カラスっぽいブログ

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井沢元彦の儒教にたいする考えの「まとめ」のような本。
正直言って、いままでに井沢元彦の歴史書を読んできた身からすれば、特に目新しい部分は無く、今までの本で語られた儒教に対する見解をわかりやすくまとめた、という印象が強い。
したがって、ここが良いとか、この見解が新鮮だったというのはなく、井沢元彦の儒教に対する考え方をおさらいするという感じの印象だった。

もちろん、井沢元彦をあまり読んだ事が無いという人は、この本を読めば、いろいろと教えられる事が多いだろうし、新鮮な印象を受けるだろう。
そして、儒教や朱子学について知りたいという人にもお勧めだ。
とにかく、井沢元彦という人は、「宗教」をわかりやすく解説させたら抜群に上手い人なので、わかりやすさという点については保証できる。


本の内容についてだが、タイトルとややずれる部分がある。
まず、タイトルに儒教とあるが、この本で取り上げられているのは、古いほうの儒教ではなく新儒教とでもいうべき朱子学のほうだ。
これは著者の解説によれば、
「孔子の説いた儒教ではほのぼのとしていたことを、新儒教はもの凄く極端にしてしまった」(P47~P48)
のだそうだ。

それともう一つ、中韓とあるが、中韓よりも日本の話が多く、全体の3分の2以上を占める。
従って、この本のタイトルを内容に即して名付けるならば、「日本における朱子学の毒」なんかが適当じゃないかな、と思う。
本と中身が若干ずれることは時たま見受けられるが、商売のためには仕方が無いとはいえ、もう少し正確なタイトルをつけるようにしてほしい。



あと最後に、井沢さんがこの本の中で、
「この一連の悲劇を靖康の変(一一二七年)といいます。今はあまり注目されていませんが、今後、中国を変えた大事件としてクローズアップされると、私は確信しています。ぜひ、二〇一七年の時点で井沢がそういっていたとご記憶ください。」(P53~P54)
と書いていたので一応引用しておきます。(笑)



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魔理沙の唐突な死から始まるやや重めのシリアス作品。
作品全体にただよう独特の空虚感が印象的な作品で、人を失う事の哀しみを非常に丁寧に描いている。
丁寧にといっても、感動の押し売りのような押し付けがましさは皆無で、人が死ぬ事のあっけなさと、残されたものたちの哀しみや驚きというものが、淡々と静かに描かれている。
自分としてはこういった、抑制された筆致と淡々とした静けさが非常に好ましかった。まあ、ただたんに自分の好みにあっていただけ、といわれればそうなのだが。

あまり目立つわけではないが、細部の描写もたいへん良かった。
例えば終盤に、アリスが霊夢の二の腕に触れるという描写があるんだけど、これはとても良いと思う。
このシーンがあるかないかでは、かなり違ってくると思う。
作者がどんな考えでこのシーンを描いたかは知らないが、非常にうまいというか、決して目立つシーンではないけれども、良い描写だと思う。
アリスの関心がほんのわずか霊夢に対して向きつつあるという事を、言葉や台詞などではなく、さりげない描写でそれとなく読者に伝えると同時に、肉体そのものに触れるという行為は、アリスが死から生へと向き合うことに決めたという事実を示しているように思える。
ほんの些細なさりげない描写ではあるけれど、作者のマンガ家としての上手さを感じさせるシーンである。

また、アリスの持つ存在感というか、独特の空虚感がたいへん素晴らしく、この作家さんは、アリスを描く事に向いている人だなと感じた。
これは絵柄とアリスがマッチしているというだけではなく、アリスというキャラクターのもつ繊細さや空虚さというものを非常によく表現している。
特に印象に残ったのは、P41の半レイプの目のアリスがね、すごくいい。
そして!、その次のページのアリスの笑顔、これがいい。透明感と儚さにあふれた表情をしており、作品全体で見たときに一番のクライマックスだと思う。
ここまで綺麗な笑顔をしてしまえるんだってのがね、もう…。
言葉で説明するよりも圧倒的な説得力を持ってしまっており、マンガというジャンルの持つ強みと良さをあじあわせてくれる。


そういうわけで、この作家の本は初めてなんだけど、いい買い物だった…。
全体的にやわらかな絵柄なんだけど、やわらかすぎないところが良いと思う。
あと、作品全体に独特の空虚感があって、それがよかった。
やっぱ空虚感のある作品ってのはいいもんだね。







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ソクラテスというと当然のことながら、「哲学」というジャンルに属するものと考えるのが常識だ。
古代の賢人あるいは聖人として、ブッダやキリストとならべて挙げられることの多いソクラテスだが、奇妙に感じた事はないだろうか?
明らかに宗教ジャンルの人物であるブッダやキリスト、孔子にくらべ、なぜひとりだけ哲学の偉人なんだ、と。
四聖人とかいって、なぜだか一人だけ哲学者のソクラテス、少しばかり浮いているというと言いすぎかもしれないが、なぜ一人だけ、「哲学」の人という事になっているのか?
こういった素朴な疑問を抱いた事のある人には、ぜひこの本をお勧めする。
この本は、そもそもにおいてソクラテスは宗教的な存在であったのが、後世の人間が脱色し、非宗教的な人間にしてしまった、と主張しているのだから。

ではなぜ、非宗教的存在にする必要があったのか、著者によればそれはキリスト教の「都合」であるという。
キリスト教という絶対的な宗教は、対等の存在を認めることはない、ソクラテスが宗教的存在だと都合が悪いわけだ。
かといって、邪神としておとしめるのは、その「思想」はあまりに惜しい。
ソクラテスをキリスト教が取り込むに当たって、ソクラテス像を歪曲する必要があった、そしてそれは、当然のことながら、キリスト教にとって都合のいいものになる。
そういった歪曲された姿のソクラテスこそが、現在我々のイメージする哲学者ソクラテスである、と。

著者は、ソクラテスの隠れた面、我々に知られていない、宗教的なソクラテスを読者に提出する。
しかし、その姿勢は非常に慎重である。
もうちょっと大胆に攻めてもいいんじゃないの?とも思うが、この慎重さは著者に対する信頼感につながるし、個人的にはむしろ好印象だった。
大胆な事を主張しているからこそ、なるたけ細心に慎重に、というのが著者のスタンスらしい。
なので、テーマがあまりにも大胆なのでいまいち食指が動かないという人もいるかもしれないが、なんかとっぴな事をいって人を驚かせようという感じとは程遠く、むしろ誠実ささえ感じるので、とりあえず興味のある人は読んで見て、という感じだ。


自分は結構前に読んで、今回は再読だったんだけど、普通に面白かった。
前読んだときは印象に残らなかったけど、今回読んだときは、中盤におけるテミス神に関する考察が結構面白くて印象に残った。
まあ、前に読んだときは、神話に対してあんまり興味もなく知識もなかったからかな…、テミス神に関する考察があることさえ忘れていたぞ。



タイトルどおりマリー・アントワネットを主人公にフランス革命を描いた歴史小説。
アントワネットと王家の運命を縦軸に、サド侯爵や、オリジナルキャラのマルグリッド、暗殺者のシャルロットコルデー、処刑人サムソンなどが登場するが、そういったキャラクターの「出演」が無理なく本筋に絡めてあり、自然に読み通すことができる。

とにかく、普通に面白かった。外国の歴史を題材にした作品なので、ものめずらしさや、はじめて知る史実であるが故の面白さ、という部分もあったかもしれないが。
読みやすさわかりやすさという点について言えば、かなり高い評価を下すことができる。
やはり、作者が日本人という事もあって、日本人向けにわかりやすく書いており、つまるような場面はない。
外国を舞台にした歴史小説と言うと、少しばかり気後れしてしまうかもしれないが、フランス革命という史実を知るに当たって、手ごろで読みやすく、そして面白い小説であり、歴史を知るために小説を読むという層に対しても、遠慮なく勧めることができる。


もちろん主人公はマリー・アントワネットなわけだが、彼女の輿入れから始まり、基本的には彼女中心の物語展開であり、一人の人間の人生を追っかけてゆくという感じなので、複雑さはなく、読みやすい。
フランス革命というものを彼女を取囲む現象として描いており、この小説の副題に、彼女から見たフランス革命、とつけても良いくらいだ。
と、言うのは、中盤以降から、彼女はフランス革命という現象に本格的に巻き込まれてゆくことになるのだが、一読者の印象としては、それが少しばかり唐突というか、気がついたら国民の反感を買っていて、いつの間にか包囲されていた、という感じだったりするのだ。
つまりは、アントワネットの主観と、読者の印象がシンクロする構成になっており、これは計算したものなのかどうかはわからないが、よい効果をもたらしている。

それだけでなく、先にも述べたように、サド侯爵やシャルロットコルデーなどといった脇役が、本筋に無理なく絡む事によって、本筋に彩りを与えており、物語を単調さから救っている。
とにかく、普通に面白かった、良い小説だった。
外国の歴史をてっとりばやく知りたいという欲求に答えてくれるだけでなく、小説としても普通に面白いというのが素晴らしい。
もしかしたら、フランス革命に詳しい人間ならば、いくつかつっこみどころを見つけて冷めてしまうかもしれないが、自分のように、さして詳しくない人間の場合、そういったこともなく普通に楽しめる。
多分だけど、初心者向けの本だと思う、あまり知識がないほうが、楽しめるのかもしれない。

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