事前に原作は二冊くらい読んだが、それほど深い印象を受けたわけではなく、まあまあよいぐらいの評価でしかなかった。
しかし、このアニメを視聴したら、原作の評価が自分の中で上昇し、きちんと読まねば、と思うようになってしまった。
何でなのかはわからないけれど、このアニメ作品のおかげで、小説もアニメも両方好きになり、ひとつのコンテンツとして好きになってしまった。
わざわざドラマCDつきの方を駿河屋で注文したりするようになってしまったわけで、これからは新刊が出るたびに買うことになると思う。
で、このアニメ作品の魅力なのだが、なかなか語るのは難しいというか、妙な魅力とオーラを持っているとしか言いようがない、みたいな部分がある。
もちろん、ダークファンタジーとして面白いとか、死と隣り合わせの緊張感だとか、ヒロインが魅力的とか、まあそういった部分部分に関しては色々と言えるのだろうけれど、総体として、一言二言でズバッとこの作品の魅力を語るというのは、なかなか難しい。
「なんだかよくわからないけれど、妙なオーラがある。」としか言いようのない作品で、細かい事実を並べて、一つ一つその魅力を語っていくということはできても、この作品の本質を掬い上げて大雑把に語るというのはできそうにない。
なので、細かい事実を拾ってそれぞれの魅力を述べたいと思う。
・死と隣り合わせのダークファンタジー
ダークファンタジーという言葉に対してはあまりなじみがなく、いまいちピンとこないというか、あまり使い慣れていない言葉なので、できれば使いたくなかったが、この作品名で検索すると、この「ダークファンタジー」という言葉を使ってこの作品を評している文章をちらほら見かけるので、真似して使ってみた。
ようするに、緊張感のある・死と隣り合わせの・リアルよりの、作品ということだ。
人間の死というものがわりと身近なものとして描かれているし、戦闘シーンも、ほんの少しのミスでパーティが全滅しかけるような緊張感のあるものとして描かれている。
・主人公はモブであり弱者であり凡人
じゃあなぜ死にやすいか、いや、死と隣りあわせなのかといえば、主人公たちのレベルがあまり高くないから、この一言に尽きる。
普通の、ファンタジー作品やRPG作品における脇役みたいな人たちが主人公を務めている。とてもではないが魔王を倒せそうにはない、それどころか、魔王直属の幹部クラスの魔物とエンカウントしたら即死だろう。
いわば凡人よりの主人公たちであり、RPGで訪れる村を守っている冒険者のちょっと上くらいのレベルだ。
RPGの主人公たちと共闘するとか、そんなレベルにさえない。彼ら(勇者たち)は次元の違う高みの存在として描かれる。
そんな、いわばある意味普通の人たちの物語だ。
しかしこれは、よくあるお話であると同時にかかせないものではなかろうか。
勇者たちが魔王を討伐するために旅を続けるには、彼らのような存在が不可欠なのではなかろうか…。
RPGでは、あまり表現されることはないが、彼らの旅がつつがなく進行するためには、底辺の冒険者たちが、黙々と雑魚狩りをしてくれることが必要なのではあるまいか。
そういったことを考えさせる。
・失禁癖のある女神官が良かった
いやこれはもう本当によかった。
本編においては二回ほどもらしてくれるんだけど、いずれもここぞという場面でもらしてくれるので、おもらしが無駄になっていなくて、見ていて満足感が高い。
また、色に関してもやや透明がちなリアルおしっこ路線であり、安易に黄色くしないスタッフの硬派な姿勢は、アニメエロゲ問わずみんな見習ってほしいと思う。
また、この女神官ちゃんが最高に魅力的なキャラというのも大きい。
ロリではないけれど全体的に小柄な女の子で、すごくかわいいんだけど、妙に母性を感じさせるものがあり、すがりつきたくなる。抱きしめたいというよりもすがりつきたいという感じ。
なんかもう意味もなくすがりつきたいなって思うわけ。
この女神官ちゃんの魅力に引っ張られて視聴してしまったという部分も結構大きくて、シリアスドックタグ制ダークファンタジーとしての魅力だけではなく、キャラの魅力も大きい。
特にパーティーメンバーの、女神官と金床はおそらく人気を二分するだろう。俺は当然女神官派だが。
エルフといえば彼女の吐瀉はよかった。
とてつもなく自然な吐瀉演技で、ああこの娘は今吐いてるんだなと聞く人に思わせるナチュラル吐瀉演技で、中の人は本当にすごいなと思ったものだ。
残念ながら一回しかないが、圧倒的ともいえるリアルさと自然さが聞くものことごとくを魅了するナチュラル吐瀉演技だった。とても良かった。
また、演技といえば、女神官ちゃんが肩を喰われて絶叫するシーンでの小倉唯の演技はただただ神の一言。
どっから声出してんだこいつ?、と思わせる神演技で、これだけでも見る価値がある、いや、聞く価値があると思わせるような絶叫演技で、普段絶叫というとエロ方面のイメージしかないけれど、こういうタイプのシリアスガチ絶叫もとてもよいものだなと、思った。
・若干人を選ぶけれど
若干人を選ぶけれど、良い作品だった。
とりあえず、RPG好きは見るべきだと思う。勇者だけでは世界を救えず、彼らのようなモブが見えないところでこっそり世界を支えてくれるからこそ、勇者は旅をできるのだなということが良くわかる。
そうすると、今までとは違った目でRPGを見ることにできる。
名も無きモブのおかげで世界は成立しており、無数の人間の影の努力で勇者の旅は成立しているのだ、と考えると、無数の村や町が欠かせないものに見えてくる。
考えてみれば当然のことで、武器屋がなければ武器を買えないし、宿屋がなければ回復もできない。
町があって村があって、宿屋で回復できるのは当然と思い込んでいるけれど、モンスターが徘徊する危険な世界で、ああいったインフラを維持し続けるのは想像以上に大変なことだろう。
そういった意味でモブ村人の皆さんには頭が下がる思いがするし、そこかしこにモンスターが湧き出る世界というものは、結構綱渡りで存続しているんじゃないかなあ、と思うようになった。
RPG作品の作中人物に、よく、世界の危機だとかなんだとか言われたりするけど、一プレイヤーとしてはそういったお約束に慣れてしまっていて、はいはいそうですねと冷静に聞き流してしまったりするものだが、この作品に触れてからは、少しばかり真剣に聞くようになるかもしれない。
多くの人間がかろうじて支えている世界、その世界の命運を担うことになると考えれば、今まで以上にRPGに対する熱が高まるし、襟を正してプレイしよう…という気になるかもしれない。
とにかく、今まではあまり考えなかったRPGの一側面について考えさせる内容で、しつこく言うけれど、RPG好きは見るべきだろう。
また、RPGが特に好きでなくても、シリアス失禁ダークファンタジーとして良い出来なので見る価値はあると思う。