カラスっぽいブログ

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マキャベリと言うと権謀術数みたいなイメージがあって、目的のためには手段を選ばぬ的な、暗いイメージが付きまとう。
要するにオーベルシュタインのようなタイプのキャラクターが、いわゆるマキャベリストなどと呼ばれるもので、それに付きまとうイメージは、物事の裏面を担当する、手を汚す事をためらわないという感じのイメージだ。
つまりは、マキャベリは一つの思想として受け入れられている、政治をおこなううえでは、あらゆる権謀術策を尽くせという教えとして。
世の中はこうなっているもの、と説明するのが科学で、
人はこうすべきと教えるのが思想ならば、
大部分の人間は、マキャベリは思想家であると答えるだろう。
それも、みもふたもなく実用一点張りのあぶない思想家として。

しかし、この書物を読むと、マキャベリに対するそういったイメージは一転する。
マキャベリは、確かに思想家かもしれないが、それ以前に科学者なのだ。
人間や政治という、実験室で検証することはできない題材を扱っているが、彼の視線は確かに科学者のそれ。
人間とはこういうもの、政治とはこういうもの、例えば、水が百度になると蒸発するという真理を語るのと同じ口調で、彼は政治と人間の真理について語る。
それは、こうあるべきとか、こうするべきといった、思想や理想を語る口調とは程遠い、かといって諦念とも違う。
彼はただたんに、目の前の事実を平坦な口調に述べたに過ぎない、それに対して反発を覚えるならば、万有引力の法則や、質量保存の法則に対しても反発を覚えるべきだろう。
彼はただたんに目の前の現実を切り取り、こういった場合は人間はこう動く、あの場合はこう、と観察し分析し記述したに過ぎない。
彼が、こうすべきと言うとき、それは人はこう生きるべきという理想を語ったわけではなくて、国を上手く収めるためにはこうすべき、という意味なのだ。

従って、彼の言葉には理想はない、そこに不満を覚える人間もいるかもしれないが、そもそもにおいてマキャベリに理想や思想を求めるのが間違いなのだ。
ここにあるのはただ事実、そして、ただの法則。



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なかなか面白い作品だった。
作者の飛鳥部勝則は、自作の絵画を作中において登場させ、それに重要な役割を担わせるという特異な作風の作家らしい。
この人の作品はこれ以外だと、デビュー作の殉教カテリナ車輪くらいしか読んでいないけれど、いずれも面白かった。
さすがは自分で絵を書くだけはあり、絵画に対する薀蓄が多く、それが作中で起こる殺人事件と自然な形で結び付けられているので、読んでいて結構楽しい。
絵画ミステリとでもいうべき独特の作風で、『絵』の意味を読み解きつつ真犯人に迫るという作風は今回も健在だ。

孤島で起きる連続殺人、そして、死体の傍には必ずバベルの塔の絵が…、という感じでいかにも本格ミステリという感じだが、自分の場合、この作品の持つミステリ面よりも人物の魅力に心惹かれるものがあり、謎めいた神秘系ヒロインの志乃ちゃんが心に残った。
冒頭からいきなり登場する彼女だけが、言動がやや電波系で奇妙な印象を読者にもたらす。
この、彼女のもたらす奇妙な印象、その神秘性は、全編を貫通するものであり、彼女自身が1つの謎である。
物語は、連続殺人の謎を解きつつも、平行して彼女の謎も徐々に明かされるという構造になっており、この二つの謎が読者を牽引する。
そして、物語の最期にいたって彼女の言動の謎が明かされるわけだが、それはあまりにもストレートすぎてまったく考え付かないような意外なものだった。
ひねりがまったく無いだけに思いつかないという感じで、お見事。
連続殺人の謎よりも印象に残ってしまった。

とまあそんな感じでミステリとして面白いというのもあるがそれ以上にヒロインの魅力が心に残り、自分にとっては萌える作品だった。
どうやらこの作者は、こういった神秘系ヒロインを書くのが得意らしく(ニコニコ大百科による)、他の作品を読むのが楽しみになった。
とりあえず、神秘系ヒロインと出会いたいって人は読んで損は無いんじゃないかな。



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一応歴史小説の範疇にギリギリはいると思われるが…、解説によると史伝らしい。

小西行長という一人の武将を、想像力をつかって描くというよりも、彼はいったいどんな人間であったかという実像に迫るという感じで、映像作品で言えば映画やドラマよりもドキュメンタリーよりの作品だ。
とっつきはやや悪く、小説のような読みやすさはさすがにないが、資料を引用しつつ、じわじわと小西行長の真相に迫るその手腕は、誠実さを感じる。
また、史観というと大げさかもしれないが、作者独自の視点も光っており、そういったところも読みどころだろう。
歴史小説というよりは、エンタメ度の高い歴史書という感じで、確かにややかたい本ではあるけれど、決して読みにくいという事はなく、小西行長と朝鮮出兵に興味があるのならば、一読して損は無いだろう。

そう、この本の主題は朝鮮出兵である。見ようによっては、小西行長という人物を通して描かれた朝鮮出兵の本といっても決して間違ってはいない。
全体の叙述の割合からしてそうだ。
小西行長が出世する、いわば人生の前半期に当たる描写は全体の約三分の一であり、本の大部分は朝鮮出兵それも、文禄の役が占める。
文禄の役における小西行長といえば、その謎めいた行動、太閤に対する大胆な裏切りが有名だ。
謎は二つある、ひとつはなぜああも大胆な行動を取れたのか、もう一つは露見した際になぜ彼は無事だったのか。
この二つの答は、作中において非常に説得力のある答が提示されているので、興味のある人は呼んでほしい。

さて、作者は行長を面従腹背の人として書く。
あらゆる場所であらゆる場合に板ばさみにあってしまう不幸な人、として描いており、高山右近のような颯爽とした振る舞いができない弱い人としても描いている。
従って、というわけでもないが、人物に対しいまいち魅力を感じなかった。
高山右近のようなさっぱりした人物のほうが格好いいんだよね、その点行長はいまいち小物というか、あんま格好良くない。
へたに美化せずに史実を追求するという姿勢なのだから、当然といえば当然なのかもしれないがやはり、行長に対してあまり魅力を感じなかったおかげで、読後感はやや微妙だったりする。
決してつまらなくは無かったし、いくつか光る部分もあった。
例えば中盤、行長がとあるシーンで「泣く」んだけど、これはとても心に残るシーンだし、終盤においても、行長の努力が大地震で瓦解してしまうという場面があって、歴史というものの持つ面白さを味わう事ができた。
ただ、行長個人に対して魅力を感じたり興味を持ったりするという事はなく、はっきりいって、なんかさえない中年男だなあ、ぐらいにしか思わなかった。

もっとも、これはただたんに相性や好みの問題かも知れず、この作品そのものに欠点を感じるというよりも、俺にとって行長は魅力を感じないキャラだ、という事に過ぎない。従って、小西行長について知りたいとか、そもそも行長が好きだ、といった人には安心してお勧めできる。
ただ、どうしてもひとつツッコんでおきたいのは、作者がキリシタンなおかげで、やっぱり神って偉大ですねめでたしめでたし、見たいな感じの終わり方で、なんとももやもやしてしまったところ。
一人の人間の人生や苦労を、神やら何やらを持ってきてスパッと解釈してしまうという姿勢は、宗教家としては正しいのかもしれないが、信仰に無縁な一般人としては、それでいいの?って思ってしまう。
そんな簡単に解釈されたらたまったもんじゃねぇよ、って思ったりするんだけど…、まあこの場合は行長自身がキリシタンだから、いいのかな。
そんなこんなで、悪くない本なんだけど、ちょこっとだけ目につく宗教臭がやや鼻に付いたかなって感じ。


知人に小西行長がいたら大変だよね、という件
遠藤周作『鉄の首枷』の小西行長の裏切る人の心理



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タイトルのおかげで損をしている本ではないだろうか。
やたらに刺激的で思わず眼を剥いてしまうタイトル、しかも著者はフランス人という事で、どうせドイツ嫌いのフランス人がやっかみ混じりにドイツをディスっているんだろうなどと、はじめて本屋で見かけたときは思ってしまったものだ。
そんなふうに思ってしまい、本を手に取ることなくスルーしてしまった人は多いと思う、そんな人はぜひともこの本を手にして欲しい、いや買えというわけではない、ただ、本を開いて最初のカラーページを見てほしい。
一目でわかることだが、ガスパイプラインの終着点のほとんどがドイツだったりする。(笑)
これほどまでわかりやすい、「ドイツ帝国」の地図というのもなかなかないかもしれない。
それだけでなく、本書を紐解けばわかるが、EUが実質ドイツ帝国とかしているという事が、著者の口を借りて繰り返し語られる。
そして、そのドイツ帝国の成立に一役買ってしまったのがフランスだというのだから、面白い。
著者によれば、フランスには独特の恐独病というモノがあるらしく、ドイツは怖いから刺激しちゃダメとばかりに気を使っていたら、いつのまにやらドイツがEUの王座についてしまったという事らしい、それもドイツ人が望んだわけではないのにも関わらず。
誰も掣肘する者がいない結果、えっいいんすか?とばかりにいつのまにやらドイツ帝国を築き上げてしまったドイツ人。
そんなドイツを著者は過激な言葉を弄してディスっている。


引用

P143
しかしドイツは、すでに二度にわたってヨーロッパ大陸を決定的な危機に晒した国であり、人間の非合理性の集積地の一つだ。ドイツの「例外的」に素晴らしい経済的パフォーマンスは、あの国がつねに「例外的」であることの証拠ではないか。
ドイツというのは、計り知れないほどに巨大な文化だが、人間存在の複雑さを視野から失いがちで、アンバランスであるがゆえに恐ろしい文化でもある。
ドイツが頑固に緊縮経済を押しつけ、その結果ヨーロッパが世界経済の中で見通しのつかぬ黒い穴のようになったのを見るにつけ、問わないわけにはいかない。
ヨーロッパは、二〇世紀の初め以来、ドイツのリーダーシップの下で定期的に自殺する大陸なのではないか、と。
そう、ドイツに対しては「予防原則」が適用されるべきだ!


いやちょっとさすがに言いすぎなんじゃないかな?(笑)
そもそも、二度の世界大戦の原因をドイツにだけおっかぶせるのはおかしくね?、と思ったり。
まあそんなふうな感じで、ちょっとドイツをディスりすぎかなと思う部分はあるけれど、今のEUはどんなもんなのかというのを知ることができ、面白かった。
一応EUには大統領がいるんだけど存在感空気な上に、なんとなくEUっていうとメルケルっていうイメージがあって、それが不思議だなって思ってる人は読んだほうがいいんじゃないかなって気がする。


わかりやすい要約
書評・「ドイツ帝国」が世界を破滅させる エマニュエル・トッド 文春新書



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